口腔外科

    嚢胞(のうほう)

    からだのなかに生じた病的な袋状のものを嚢胞といいます。
    一般にそのなかには液状の内容物が入っています。
    口腔外科領域には、顎骨内にできる嚢胞と口腔の軟組織に発生する嚢胞があります。

     

    歯根嚢胞

    むし歯が進行し、神経に感染が起こり、それが歯根の尖端に波及すると炎症が生じます。
    それが慢性化すると歯根嚢胞ができます。
    日常臨床でしばしば遭遇するもので、顎骨の中に生じる嚢胞の 50%以上を占めます。

    治療
    根の治療が奏効しない場合や根の治療ができない場合には、手術によって嚢胞の摘出を行います。
    原因歯の状態が悪い場合には、嚢胞の摘出と同時に抜歯を行います。
    原因歯の状態が良い場合には、感染した歯根の尖端部を切除し嚢胞の摘出を行います。

     

    粘液嚢胞(ねんえきのうほう)

    口の粘膜を咬んだりすることで唾液が出てくる管が閉塞して唾液が貯まったことにより生じる嚢胞です。
    下唇や舌下面に多くみられます。口腔外科領域における軟組織嚢胞の大部分が本症です。

    治療

    嚢胞摘出を基本とします。原因となっている唾液腺も同時に除去します。

     

    顎顔面の外傷

    歯の外傷(がいしょう)

    歯の打撲(だぼく)

    歯をぶつけた時など、歯や歯槽骨(しそうこつ)に目立った外傷もなく、単に一時的に歯根膜(しこんまく)の炎症のみをおこした場合をいいます。

    治療

    安静にしていると、数日から 1~2 週間で治癒します。
    多くの場合、痛みを伴うため消炎鎮痛薬を必要とします。
    場合によっては噛み合わせの調整も行います。

     

    歯の脱臼

    外傷により歯が少し抜けかかったものもしくは完全に抜けたものです。
    抜けかかった状態では歯根膜の一部が断裂して歯が動揺し、さわると痛みを訴えます。
    歯根の先端で歯髄(しずい)が断裂し、のちに歯髄壊死(しずいえし)をおこすことがあり、長期の経過観察を必要とします。

    治療

    細いワイヤや接着性レジンを用いて、一時的に歯を固定します。
    歯髄壊死の診断には歯髄電気診断器を用います。
    抜け落ちた場合でも再植し固定することにより元通りになる場合もあります。
    そのためには脱落歯をできるだけ早くもとに戻すことが重要で、歯を乾燥させないように口のなかに含んだり、牛乳につけたりして受診してください。

     

    歯の破折(はせつ)

    外傷や咀嚼(そしゃく)によって、歯に亀裂が入ったり、歯が折れたりすることをいいます。
    硬い食べ物をかんだとき、奥歯が垂直に割れて痛むことがあります。
    破折の診断はつけやすいのですが、亀裂の場合は、原因不明の痛みとして扱われることもあるので注意が必要です。

    治療

    歯の一部が欠けた場合には、レジンや金属でもとどおりに修復します。
    大きく割れて神経が露出しているような場合には、神経を除去し、根の治療を行なった後、被せ物などを作製します。
    歯根が大きく折れたような場合は、保存は困難で通常抜歯になりますが、条件がよければ保存できる場合もあります。

     

    軟組織の外傷

    口や顔の軟らかい部分、いいかえれば皮膚や粘膜にみられる外傷の総称です。
    また、顎骨(がっこつ:あごの骨)の骨折にもしばしば合併します。

    代表的なものとしては、顔面皮膚のすり傷(擦過傷:さっかしょう)、口唇(こうしん)の裂傷、舌や頬粘膜(きょうねんまく)の咬傷(こうしょう)、軟口蓋(なんこうがい)の穿孔(せんこう)があげられます。
    原因は転倒、転落、交通事故、スポーツ、けんか、誤って噛む(咬傷)などがあげられます。

    共通する症状としては、出血があります。
    受傷時にはかなりの出血がみられますが、太い血管を直接損傷しないかぎり、圧迫や時間経過とともに止血するのがふつうです。
    一方、腫れや痛みは時間経過ともに強くなります。
    屋外での怪我の場合は傷に異物が混入していることがあります。
    時間の経過とともに感染がおこり、傷が汚くなることがあります。

    治療

    出血している場合には、まず清潔な布やガーゼで傷口を圧迫して早急にご連絡いただき受診してください。
    なお広範囲にわたる傷やあふれ出るような出血の場合は大学病院もしくは市中病院の口腔外科へご連絡下さい。
    傷のなかに異物がないか確認し、縫合(ほうごう)処置を行います。
    処置後は、感染を予防するために、抗菌薬を服用する必要があります。
    感染すると、治癒後傷あとが目立つようになります。

     

    口腔粘膜疾患

    口腔粘膜疾患は、口腔内組織に白斑や紅斑、びらん、水疱、潰瘍、腫瘤、色素沈着などが見られる疾患です。
    原因としては、物理・化学的な刺激や細菌・ウイルス・真菌感染、アレルギー性疾患、先天異常や発育異常、全身疾患によるものなどが挙げられます。
    口腔粘膜が部分的に白くなる 「白板症」や 「扁平苔癬」は口腔潜在的悪性疾患と言われ、正常な部分よりも悪性化する可能性が高いと言われています。
    また、口の中の粘膜に起こる炎症を総称して口内炎といい、1 度は経験したことがあると思いますが、通常であれば 1,2 週間で改善します。
    なかなか治らない場合は詳しい検査が必要となる場合があります。

    治療

    うがい薬や軟膏の処方で経過観察を行います。
    経過から精査が必要と判断した場合、もしくは受診された時点で明らかに腫瘍が疑われる場合は直ちに、新潟大学医歯学総合病院口腔外科へ紹介いたします。

     

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